30代女性 サクラの場合 <②父親の病院転院編>

この記事は、vol.1 の続編となります。

手術の翌日から転院ま

父は手術を終えた翌日から、リハビリが始まりました。手術を終えた時に主治医の先生から説明がありましたが、翌日からスタートすることにとても驚きました。脳卒中後のリハビリは、半年くらいが勝負なのだそうです。

翌日お見舞いで病室に行くと、すでにリハビリの先生が来ていました。リハビリの先生に、父の状態や今後のリハビリの流れについて聞きました。脳卒中では、障害を受けた脳の場所によって症状が違ってきたり、経過も年齢などにより人それぞれ回復度合いが変わってきたりするらしい。父は、会話はできるものの左の手足や体幹に麻痺が生じ動かしづらい状態でした。

今後、足に装具というものを付けてリハビリを進めて行く可能性があるそうです。頼りになる先生だったので、この人にずっと見てもらえるのであれば安心だ、とホットしたのを覚えています。


入院から5日後、地域医療連携室というところから医療ソーシャルワーカー(MSW)という方が私たち親子のもとにお話に来られました。ここで、今の病院にはあと数週間しか居られないことを告げられ驚きました。確か、入院時にお医者さんからそのような話を聞いたような気もするけど、あの時は動揺していてあまり覚えていなかったのが正直なところです。病院にも慣れてきた時に言われたので、ちょっぴり寂しい気分になりました。

今後は、リハビリを継続する場合はリハビリを専門とした病院に転院しなければならないそうです。今の日本の医療制度では、各病院の役割というのがあって、転院しないといけないということをこの時初めて知りました。

病院や家から比較的近い場所にあるリハビリ専門の病院を、いくつかピックアップして教えてもらいました。病院のパンフレットを見ながら、お見舞いに通うことも踏まえ、どこにするのが良いのか母と話を進めました。

転院後から自宅退院直前まで

最初に運び込まれた病院に2週間ほど入院し、その後に移ったリハビリ専門の病院で、父はみるみるうちに元気になっていきました。リハビリスタッフの数も多く、リハビリの回数も増えました。父も当初と比べると出来ることが多くなり、面会に行ったときは笑顔が増えました。時には、リハビリで出来るようになったことを私たち家族に見せてくれました。

リハビリ専門病院のソーシャルワーカー(MSW)さんとは、入院初日にお話しました。母と一緒に「介護保険」についての説明を受け、自宅に手すりをつけたり福祉用具という介護用の道具を借りたりするのに、介護保険を持っておくと補助が受けられるとアドバイスをもらいました。


数日後、私は職場から休みをもらい、母と一緒に実家近くの役所に行きました。役所の方が手続きなど丁寧に教えてくれたので、申請自体はそんなに難しくありませんでした。介護保険というものは高齢者が使うイメージがあったため、父のように若く(58歳)、ある程度動けている人でも使えるのだとビックリしました。


父のリハビリは順調に進んでいきました。歩く練習の際に必要な専用の装具も作成しました。義肢装具士という方が病院に来て専用の装具を作ってくれたのですが、請求書が意外と高額で驚きました。後ほど役所で申請したら何割か返金されるそうなので、少し安心しました。

父のリハビリの目標は、復職と運転を再開をすることでした。
退院が近くなった頃、父は杖を使い200m程度は連続で歩けるようになりました。右手は使えるため、食事や字を書くことは少し工夫をすれば問題なく行えるレベル。階段の上り下りも、手すりを持ってゆっくり行えば一人でできるようになりました。トイレやお風呂も一人でなんとか出来ます。

復職については、退院後の調子に合わせて再開できる日を検討しようとなりました。職場の方と電話する父を見て、かなり不安を抱いているように感じました。運転については、万が一事故を起こしてしまってからでは遅いので、私と母は運転しないようにと父に伝えました。父もその話を受け、運転はやめておこうかなと話すようになりましたが、職場までの近場の運転は再開したい思いもあるようです。今後も話し合いや情報収集が必要かもしれません。

母は、毎日のお見舞いで少し疲れているようでした。今後家に帰ったあと、母が疲弊しないようにしっかりと周りから助けてもらえるように準備しないといけないな、と改めて感じます。

解説

ここまででポイントとなる箇所を整理しましょう。

まず、現在の医療の仕組みでは、病院には役割が決められており、入院した病院だけで治療やリハビリ、療養など全てを簡潔することはできません。病院の機能というのは、①高度急性期 ②急性期 ③回復期 ④慢性期 の4つに分けられています。それぞれの病状に合う機能を持つ場所(病棟や病院)に移動していく必要があるのです。

介護を多く必要とする状態から変わらない場合は、自宅に帰れず施設に入所せざるをえない場合も出てくるでしょう。各病院にどのくらいの期間入院できるのか、施設にはどんな種類があって入所するにはどんな手続きがあるのかなど、様々な仕組みやサービスの現状についても知っておくことは大切です。入院した際は、これらのことについて不明な点を、地域医療連携室の方に聞いてみましょう。

また、障がいが残った状態で自宅に帰る場合、どういった介護サービスを利用できるのか、どのようにして利用を開始するのか、皆さんはご存じでしょうか?介護保険制度を利用すると、費用を軽減すさせることができます。しかし、介護保険は生活の状態によって利用できるサービスが異なります。「いざという時」のために、様々な情報にアンテナを張っておくことは無駄ではありません。


この記事(シリーズ「介護のリアル」)では、事例をもとに学べる内容となっています。次回は、30代女性サクラの場合<③病院退院編>をお送りします。

参考資料:
・厚労省:病床機能報告  
・厚労省:報告マニュアル1(基本編)令和2年度


ライター:河村由実子
取材協力:畑中良子(MSW)、川添圭子(保健師)


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