30代女性 サクラの場合 <①父親の脳卒中発症編>

30代会社員のサクラに、ある日突然やってきた家族の介護。サクラの経験をもとに、実際の流れに沿ってポイントを学んでいきましょう。

この記事では、病気の発症から入院に至るまでの時間で彼女が「皆さんに伝えておきたいポイント」を紹介してくれます。

同じような立場の方が、介護について考える機会となれば幸いです。

その日は突然やってきた

私は30歳会社員のサクラです。
3年前に結婚し、両親の住む実家を出て夫と二人で隣町のマンションに住んでいます。父は58歳会社員、母は55歳で近所のスーパーでパートをしています。私自身はフルタイムで仕事をしており実家に帰るのは月に2度程度。電話ではよく母と話をします。

ある朝、仕事に行こうと身支度をしていると、母から一本の電話が。こんな時間にかかってくる事はないので、不思議に思い電話に出ると。


——サクラちゃん?今ね、父さんとご飯食べてたんだけど、急にお茶碗落としちゃって椅子から転げ落ちちゃったの!呂律も回らなくて話もあまりできないの!これって病院に行かないといけないよね?車で連れて行くにも、父さん大きくて車まで運べないから、どうしよう?救急車呼んだ方がいいのかな?


母はとても動転した様子でした。病気などの知識がない私でしたが、以前テレビで、突然倒れたり言葉が出づらくなったりするのは「脳」が影響する、といっていたのを微かに覚えていたので、一刻も争う事態だと思い、すぐに救急車を呼ぶよう母に伝えました。


——サクラちゃん?わかった、救急車呼ぶね。救急車って番号何番だっけ?警察じゃないもんね、えっと、病院?消防?


とっさに番号を聞かれたため考えてしまいましたが、「お母さん、警察は110番。救急車は消防だよ!だから、119番に電話して。イチ・イチ・キュー!」と伝えました。

その後、私は急いで職場に電話をし、仕事をお休みにしてもらえるように上司にお願いをしました。気が動転している母に再度連絡し、父の職場や母の職場にも電話をしたか確認をし、どこの病院に運ばれるのか分かったら再度連絡を入れるよう伝えました。

入院で必要となる物・考えること

母親から聞いた病院へ、わたしは車を走らせました。生涯健康で病院などかかったことのない父の突然の事態に、「あぁこれからどうしよう・・・」と、先の見えない不安が次々と押し寄せてきました。万が一亡くなった場合のこと、父に親孝行できていなかった自分に対する後悔など、様々な感情が次々と溢れでてきます。

今、事故だけは起こしてはいけない、と焦る気持ちを抑えながらいつもより慎重に運転しました。

病院に着くと、救急車に同乗した母が救急救命センターの前のソファに座っていました。母のもとに駆け寄ると、最初の電話の時よりは少し落ち着いていましたが、わたしと同様に多くの不安を抱えている状態で、表情は非常に暗かったです。


医師から呼ばれ、母と二人で父の脳画像を見ながら説明を受けました。診断名は「脳梗塞」。

脳の右側の血管に血栓ができたため、これからその血栓を取り除き血管を再開通させる手術を行う必要があるとのことでした。同意書にサインをし、父は緊急で手術室へ運ばれました。

父の手術中、わたしは職場へ連絡をしました。手術後の状態によってはしばらくお休みをもらうかもしれないと上司へ伝えると、気にせず休めと言われました。電話を切った後、職場に対して申し訳ない気分になり、今後の仕事や働き方について改めて考えないとなぁと思いました。こういった時に使える会社の制度についても、調べなければなりません。


父の手術は無事成功し、救急病棟に入院することが決まりました。
入院の各種手続きを母と一緒に行いましたが、入院保証金として現金10万円が必要ということを知り、慌てて銀行に引き落としに行きました。この時、今後父にかかるお金のことが非常に不安になりました。私はこれから、自分の家族が増える可能性もあるため父親にかけられる余裕はなさそうなこと、母が仕事をやめて父の介護をすることになったら貯金がそこをつくのではないかなど、考え出したらキリがありませんでした。両親の貯金額についても気になりましたが、この場では聞く事はできませんでした。


入院生活で必要な物品はレンタルできるものもあるようでしたが、入院費とは別でお金が必要になると聞き、オムツやパッドなど看護師さんに言われたものをドラッグストアに買いに行きました。また、救急車で家を飛び出していたため、眼鏡や髭剃り、靴などの必要物品を実家にとりに行きました。

解説

ある日サクラにおきた緊急事態。ここまででポイントとなる箇所を整理しましょう。

まず、母親からの電話があった時に、父の状況を説明されて、とっさに「脳の病気(脳卒中)」だとイメージ出来たことがとても良かったです。脳卒中は脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の総称です。サクラの父が発症した「脳梗塞」という病気は、病院に出来るだけ早くついたほうが治療できる可能性が高くなります。

皆さんは、脳卒中の初期症状を知っているでしょうか?例えば、片側の手足や顔の半分が動かなくなったりしびれたりする、また、呂律が回らず言葉が出づらくなったりします。脳のどの場所に発生したかによって発症する症状は変わります。

ちなみに、日本人の死因の第4位が脳卒中です(1位:悪性新生物(腫瘍) 2位:心疾患 3位:老衰)。いつ、どこで、誰に起きるか分からない上に緊急性の高い病気のため、初期症状は知っておいた方が良いでしょう。

また、入院が決まり、サクラは仕切りにお金のことを気にするようになりました。皆さんは介護や入院にかかるお金について考えたことがありますか?介護は子が担うことも多いですが、そこにかかる費用は、原則、親のお金を当てるようにした方が良いでしょう。

皆さんは、両親の貯金額を知っていますか?また、このような状態になった際に使える保険をご存知ですか?もしかすると、重い障害が残り、コミュニケーションが難しくなる可能性もあります。だからこそ、元気なうちから「いざという時のこと」を事前に話し合うことが重要です。


この記事(シリーズ「介護のリアル」)では、事例をもとに学べる内容となっています。次回は、30代女性サクラの場合 <②病院転院編>をお送りします。



参考資料:
・厚労省 生活習慣予防のための健康情報サイト

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